2017年から2018年にかけて国会は「森友問題」に明け暮れていますが、あろうことか、財務省において公文書偽造の行われていたことが明らかになりました。
公文書偽造罪とは
公務員や公務所がその名義をもって権限内で所定の形式に従って作成した文書等を偽造・変造した際に問われる罪
上記は国家公務員の特殊な犯罪ですが、公務員の犯罪で代表的なものと言えるのは「賄賂」です。
なお、賄賂というと金銭の授受を思い浮かべますが金銭に限らず、欲望を満たすものであれば(接待や異性間情交など)、賄賂と見做されます。
そもそも賄賂罪とはどういう罪なのか?
賄賂罪というのは一つの罪ではなく、収賄罪と贈賄罪の総称です。
そして、収賄罪は賄賂の「収受」、「要求」、「約束」によっ成り立ち、贈賄罪は賄賂の「供与」、「申込」、「約束」によって成立します。
収賄罪
収賄罪に関しては以下の規定があります。
刑法第197条
1.公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2.公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。
(引用元:刑法第197条│Wikibooks)
ここで言う「職務」とは、職務権限に属していることが要件であり、実際に担当している職務で無くても、その職務と密接に関係するものであれば収賄罪が成立します。
ただ、職務権限における線引きは非常に難しく、公立学校の先生が父兄から贈り物を貰ったことで収賄罪が適用された例もあります。
ところで、収賄罪には以下などの多くの種類があります。
単純収賄罪
公務員がその職務に関して賄賂を収受、または要求、約束することで成立します。請託(具体的な職務行為の依頼)の有無は関係なく、賄賂を受ける、受け取ろうとする行為が犯罪ということです。
加重収賄罪
公務員がその職務に関して賄賂を収受、または要求、約束した上で、「不正行為を行う」と罪が加重されます。
なお、以下の受託収賄、事前収賄、第三者供賄においても、不正行為を行うと加重収賄罪が適用され、罪が重くなります。不正行為には職務上の秘密を洩らすことも含まれます。
受託収賄罪
請託を受けた上で収賄をすることです。請託とは、贈賄者が公務員に対して職務上の権限行為を依頼することです。
公務員がその依頼を受託して賄賂を収受した場合に受託収賄罪となります。
具体的な請託としては、決裁の内容を有利なものにして欲しい、許認可を早く下して欲しい、お金借りるならうちにして欲しい、違反行為に目をつぶって欲しい、などがあります。
なお、不正な行為ばかりではなく、正当な職務行為を依頼する場合も同罪が適用されます。
事前収賄罪
将来、公務員になろうとする人が公務員になる前に賄賂を収受、または要求、約束することです。請託があり、公務員になることで本罪が成立します。
第三者供賄罪
公務員が第三者に賄賂を供与させる犯罪です。
つまり、自分が直接賄賂を受け取らず、自分に関係している会社や個人に賄賂を供与させても収賄罪が成立します。なお、本罪の成立要件として請託の有無があります。
事後収賄罪
公務員が退職後に賄賂を収受、または要求、約束することです。本罪の成立要件は在職中の請託と、職務上の不正行為の存在です。
あっせん収賄罪
公務員が贈賄者からの請託を受けたことで他の公務員を紹介し、その紹介料を収受、または要求、約束することです。
本罪の成立要因には他の公務員への不正行為のあっせんが必要ですが、将来にあっせんすることを約束して賄賂を受けとった場合などは、実際にその後にあっせん行為が行われなかったとしても、罪は成立します。
贈賄罪とはどんな罪?
刑法第198条
第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(引用元:刑法第198条│Wikibooks)
収賄罪の主体は公務員に限定されますが、贈賄罪の主体に制限はありません。
政治献金は賄賂になるのか?
個人が政治家に寄附する「政治献金」というものがありますが、政治資金規正法で定められた範囲内であれば認められており、賄賂にはなりません。
ただし、会計を明確にしなければなりません。
なお、企業や団体などが政治家個人に献金することは禁止されています。
贈収賄の関係
贈収賄罪には以下の4つのパターンがありますが、片方の罪しか成立しないこともあります。
- 賄賂の授受があれば、贈賄罪(供与)と収賄罪(収受)が成立します
- 賄賂の要求、申込によって約束がなされれば、贈賄罪と収賄罪が成立します
- 贈賄側が賄賂を申込んでも、収賄側がこれを拒否すれば、贈賄罪(申込)が成立するだけで、収賄罪は成立しません
- 収賄側が賄賂を要求しても、贈賄側がこれを拒否すれば、収賄罪(要求)は成立しますが、贈賄罪は成立しません
単純収賄罪(加重収賄罪)を除いた他の収賄罪は、請託が存在しないと罪が成り立ちません。